ニデック土地課税違法判決 全文
京都地方裁判所で、二デック用地を田畑として課税した向日市に対する住民訴訟で、向日市の対応は違法とされました。
ニデック用地への向日市の“田畑での課税”は違法 (「生きる」ネット 情報館 内へのリンク)
「田畑ではなく宅地として課税すべき」ニデック建設地の課税巡る裁判で住民の訴え認める判決 <多くのメディアが報道> (「生きる」ネット 情報館 内へのリンク)
向日市は控訴をするとしています。
5月27日に、向日市令和6年度第2回定例会初日を迎えますが、現在ホームページに掲載されている議案には、この控訴については見当たりません。控訴期限ぎりぎりの議会日程ですし、議会提案・裁決が予想されていましたが、奇策に転じたようです。
向日市に対する住民訴訟に市が控訴する場合、市議会での議決が必要と、一般的には解されていますが、どんな理由・見解で市議会を無視して、市長の意思決定だけで控訴とするのか疑問です。
考え方の参考にしたいので、以下、一般財団法人 地方自治研究機構のサイトから転載します。
控訴する場合の議決の必要性
当市を被告とする損害陪償請求訴訟が提起され、その第一審で当市は敗訴してしまいましたが、判決に不服なため、控訴することとしました。控訴する際には、地方自治法96条1項12号の議決が必要ですか。
地方公共団体に対し損害賠償請求訴訟等の訴訟が提起され、これに応訴した地方公共団体が一審で敗訴判決を受けた場合に、判決を不服として控訴を提起する場合には、地方自治法96条1項12号に基づき、議会の議決が必要であると解するのが一般的です。
このように考えられているのは、自治法制定当時は、議会の議決を要する事項として「訴訟に関すること」と規定されていたものが、最高裁の判決において、地方公共団体が被告として応訴する場合には、議会の議決は不要であるとされ(昭和34年7月20日判決。民集13巻8号1103頁)、昭和38年の自治法改正により「訴えの提起」と改められたことによるものと思われます。すなわち、「訴訟に関すること」から応訴を差し引いたものが「訴えの提起」であるとの趣旨で改正がなされた結果と思われます。そのため、控訴する行為は、すべてが議決の対象となるとされたのでしょう(行実昭和52年12月12日自治行71号)。この行政実例の存在により、通常の文献は、地方公共団体が被告として応訴したものの敗訴した場合に行う控訴については議会の議決が必要であると解説しています。そして、ほとんどの公共団体は、控訴に際して、議会の議決を得るか、緊急専決処分を行った上で、議会に報告しています。
しかしながら、日本の民事訴訟は、三審制を採用し、一審から上告審までを一個の事件と考えています。そうとすると、一審で被告として応訴した地方公共団体が、一審判決を不服として控訴する場合には、応訴事件の継続と考えることができます。東京都は、つい最近までは、そのように考え、行政実例に従うことなく、一審被告事件について控訴する場合には、議会の議決をとっていませんでした。裁判所の取扱いも、少なくとも一審被告の東京都が控訴人となる場合には、議決証明を要求することはありませんでした。控訴裁判所も、東京高等裁判所に控訴する場合だけでなく、すべての高等裁判所に控訴する場合も同様の運用が行われることとなっていました。ただし、現実には、東京高等裁判所以外の管轄の事件がほとんどないため、その余の高等裁判所に対して控訴をしたという話を聞いたことはありません。
しかし、最近、東京都は、自らの判断で、一審被告事件についても、控訴する場合には、議会の議決をとることとしたようです。理由は、自治法96条の1項12号の法律解釈の変更ではなく、対議会との関係を考慮したものと言われています。
一審被告となった地方公共団体が、判決を不服として控訴する場合に、議会の議決が必要か否かということが判例上判断された事例は寡聞にして知りません。
したがって、一審被告事件につき、控訴を提起する場合には、議会の議決を得ておくことが安全です。議会の開会を待っていられないときは、緊急専決を行い、事後的に議会に報告した方がよいと考えます。