
向日市は55,000人の小さな市。市の中心部:市役所や市民会館の隣の高台に建設が予定されている9,300人収容(イベント時)の「アリーナ」は、所有者および建造者が京都府であるとしても、地理的にも市のシンボル的な建物であるばかりか、まちづくり、市民の憩いの拠点として、歴史的にも、芸術・文化・スポーツ・住民交流のスポットとして公共性、透明性が担保された地域・住民の理解と期待に添う建設計画が取り組まれるべきものだと思います。


アリーナ規模が似ている「ジーライオンアリーナ神戸」は

向日市から、最寄り駅である神戸三宮駅まで1時間と少しの距離にある「ジーライオンアリーナ神戸」を見て来ました。アリーナのサイズが似ている2025年4月に開業したばかり(5月3日開催の「あいみょん」のツアーにて、記事後半に当日撮影した写真を掲載)。京都アリーナ(仮称)のイベント観客数は9,300席、ジーライオンアリーナ神戸は10,000席なので、メインアリーナの内部はかなり近いものと思われますので、参考になります。


Bリーグの神戸ストークスの新ホームアリーナとなることが決定しているようです。
大切なのは、神戸に新たなアリーナが建設されたというだけではなく、国内で初めて「港湾環境整備計画」の認定を受け、港を緑化したシンボリックなパークを官民一体で整備してきたということです。パーク全体は、神戸ウォーターフロントの新エリアとして建設、その中に多目的アリーナ「GLION ARENA KOBE」、そして敷地面積約6,000平方メートルの「緑の丘」TOTTEI PARKがオープンしています。
「TOTTEI PARKは、神戸の海と山並みを五感で楽しめるスポットで、4つの設計コンセプト「Open(広場性)」「View(眺望性)」「Green(緑化)」「Symbolic(モニュメント性)」をもとに、270度海に囲まれたロケーションで神戸の港と六甲山の山並みを楽しめるスポットのほか、365日「ここに来ると何かがある」をテーマにした神戸のエンターテインメント最先端エリア創出を目指す。」とされています。(https://www.bamboo-media.jp/archives/47386/より)
TOTTEIについて 公式ホームページからさらに詳しく
https://www.totteikobe.jp/から引用。
中核施設「GLION ARENA KOBE」を含む、新港第2突堤全体のエリア愛称を、「TOTTEI(トッテイ)」と名付けました。神戸の発展を100年以上支えた突堤としての名前を継承し、港としての文化交流がその上で活発的に行われた歴史を、エンターテインメントという新しい形で実現する思いを込めました。神戸港の歴史と今後の発展の「伝統と革新」を紡ぐ名称・デザインです。
来場者に感動体験をお届けする「神戸の新たなエンターテインメントの最先端エリア」を目指してまいります。
TOTTEI PARK 緑の丘について
海と山を繋ぐ、神戸の新スポット!設計の裏側に迫る
TOTTEI PARK 緑の丘建築物の設計を手がけた一級建築士・畑友洋さんインタビュー 神戸市
パーク内の緑の丘建築物の設計を建築・環境デザイン学科 畑友洋准教授(畑友洋建築設計事務所・代表)が担当しました。
Kiss PRESSのインタビュー記事にて、TOTTEI PARKに込められた思いや、設計のプロセスについて紹介されております。
ジーライオンアリーナ神戸の公式YouTubeチャンネル
https://www.youtube.com/watch?v=XnbXWwrL8bY
パーク先端の「TOTTEI PARK 緑の丘」についても、しっかりとコンセプトワークが行われ、ウォーターフロント新エリアとして開設されています。
神戸のウォーターフロント地区に水際線を活かした質の高い賑わい空間を創出 ~「TOTTEI PARK(トッテイパーク)」プロジェクトを国土交通大臣が認定~
https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001885262.pdf
街を、もっと楽しもう Kiss PRESS より
https://kisspress.jp/articles/50940/?page=1
京都アリーナ(仮称)のコンセプトは、「とにかく造る」こと?
向日町競輪場の再整備に伴い再建造される競輪場の余剰地に作られる予定の「京都アリーナ(仮称)」(2028年10月開業予定)も、ようやく京都府による2回目の「住民説明会」が4月25日から5月6日にかけて、市内8箇所で開催されました。
説明会の「内容」は、・京都アリーナ(仮称)の整備・運営等事業について・向日町競輪場の再整備・運営事業等について・都市計画(地区計画)の変更について 等でしたが、参加者が見て思い描ける材料としては東側・北側から描いたパース(完成予想画)と、敷地全体の予想平面図が示された程度で、これらも「設計に入る段階」で出したもの。
伊藤忠商事など10社でつくるグループが設計や建設から維持管理まで一貫して担うとされ、2025年3月議会で契約を結ぶ議案が賛成多数で可決したばかりですから無理もありません。
アリーナ建設の是非の前提として住民が求める府道拡幅の課題
読売新聞オンライン
28年開業目指す「京都アリーナ」、周辺道路の拡幅が喫緊の課題…現在も慢性的な渋滞・事故多く
https://www.yomiuri.co.jp/local/kansai/news/20250310-OYO1T50029/
「周辺は道路整備が追いつかないまま急速に宅地化した地域で、現在も交通事故や慢性的な渋滞が多く、住民のアリーナ開業への不安も大きい」
京都府の発表から記事にした各メディアを見ていると、「向日町競輪場敷地において屋内スポーツ競技と自転車競技を合わせた府内スポーツ振興の拠点として整備・運営する」、「向日町競輪場の再整備とあわせて「スポーツや経済振興、多世代交流や地域ブランドの向上等の地域活性化」という「まちづくり」につなげる狙い」などと表現されていますが、今回の住民説明会でも、このあたりのコンセプトの中心となるテーマについての説明は具体性に欠けるお粗末なものだったと思います。
NHK 京都 NEWS WEB
新「アリーナ」整備で府が住民向け説明会 向日市
https://www3.nhk.or.jp/lnews/kyoto/20250428/2010022304.html
読売新聞オンライン
京都アリーナ住民説明会、交通渋滞や騒音に不安の声…「安全確保されるのか」
https://www.yomiuri.co.jp/local/kansai/news/20250507-OYO1T50010/
YAHOO!ニュース/KBS京都
京都・向日市 京都アリーナ(仮称)説明会で質問相次ぐ
https://news.yahoo.co.jp/articles/9b34034230b6bf8c8e2a7056be662b49f0c36b8e
開業まで間もなく3年と迫る京都アリーナ(仮称)。住民から見れば、やっとパースが出て来たが知りたいのはもっと詳しい図面、そもそも長年の課題である道路整備の見通しがないままの計画では混雑や事故の不安が強いまま…。
一方、ジーライオンアリーナ神戸と比較して、最も欠けているのが、何のために、どのような目的で、何をめざして作るのかなどのコンセプトがまるで無いことです。今後、それをどこで、誰が作って行くのかも言及はありません。
不安と不信が募るばかりですが、引き続き注視して行く必要があります。
住民や室内スポーツ関係者は気軽に利用できる?
競輪場再整備に際して、住民が気軽に集える緑あふれる公園や室内施設、こどもたちが安心してボール遊びができる場所、屋内スポーツの練習場所、マルシェなどのイベントができる会場…、これらを住民・市民は求めていると思います。
向日市内にはこれらのニーズに応える場所は極めて限られていますから、「アリーナ」建設に関しての向日市が行ったアンケートなどでも要望は強いものでした。
特に、屋内スポーツの練習場所への強く、京都アリーナ(仮称)の中に気軽に使える練習場所が設けられるのであれば、その要望には多少なりとも応えられるのかも知れませんが、現実は厳しいようです。
【GLION ARENA KOBE】 基本利用料金

サブアリーナの団体利用料金
使用区分 | 終日(9~21時) | |
---|---|---|
全面 | 平日 | 22,000円 |
土日祝 | 26,000円 | |
半面 | 平日 | 11,000円 |
土日祝 | 13,000円 |
このジーライオン・アリーナ神戸の公式サイトのサブアリーナの料金表では、個人利用分は記載がありません。
京都アリーナ(仮称)も、費用対効果を考えれば、同様の料金体系になることが予想されます。民間、個人の利用者が、この利用料金を支払えるでしょうか?
ホームアリーナ審査基準・検査要項 〔2026-27シーズン B.PREMIER用〕をクリアできる?
住民説明会でも、Bリーグプレミアに関することは触れられていませんでしたが、「条件が合えばハンナリーズのホームアリーナとして…」と昨年の説明会では答弁がありました。というか、それこそがアリーナ建設の主目的だと思われます。
しかし、 B.PREMIERの審査基準や検査要項に照らして考えたり、説明されることはほとんどありません。「福井ブローウィンズ」のホームアリーナ建設が遅れているとの報道もありますので、参考になるでしょう。

入場者数では「常に満員の入場者…地域ににぎわいを創出」、売上では「多くの投資を実現することでさらなる成長」、アリーナ自体も「地方創生の核に」などが審査基準の基本として設けられていますが、競輪場再整備の余剰地に造る「アリーナ」がこれらを満たすのでしょうか?

「トップリーグに入るには、競技の成績ではなく“事業の実力”が問われることになる。具体的には▼年間の売上高が12億円以上▼ホームゲームの平均入場者数4000人以上▼アリーナ5000席以上で基準を満たす設備を確保する、という参入条件が設けられているのだ」(FNNプライムオンライン)
Bリーグ再編で“経済面”と“ハード面”がトップリーグ入りの条件に アリーナ建設が遅れる「福井ブローウィンズ」 求められる地域の“熱量”
https://news.yahoo.co.jp/articles/ace147d51a981a3109b392564c0579370da9d811
B.PREMIERの審査基準
https://www.bleague.jp/files/user/about/pdf/r-38.pdf
この審査基準の中から、京都アリーナ(仮称)がクリアできるのかが疑問に思われるいくつかをご紹介します。
Ⅳ 飲食関連施設 ◆施設内に観客を対象とした飲食物販売を行う売店施設が常設施設としてある
Ⅴ 駐車場 ◆駐車場は騒音の影響で施設近隣から苦情等が発生しない場所にある ◆緊急時の搬送出入り口に隣接して、緊急車両を横付けできるスペースがある ◆ツアーバス等、団体観客に対応した大型車両駐車スペースがある ◆臨時シャトルバスの運行がある場合は、入場口にアクセスしやすい場所に乗降場所を設定でき、また、必要に応じて待機用駐車スペースがある 3.チーム専用車両用駐車場 ◆使用するチーム数に応じて、大型バス、その他関係車両が駐車できる専用スペースが、観客やメディアがアクセスできない場所に、加えて、専用出入り口に隣接した位置に、適切な規模で設定できる 4.来賓専用駐車場 ◆来賓専用出入り口に隣接した場所に、適正規模で、来賓専用駐車スペースがある 5.メディア専用駐車場 ◆メディア専用出入り口に隣接した場所に、適正規模で、メディア専用駐車スペースがある 6.テレビ中継専用駐車場 ◆以下の要件(※略)にて、テレビ中継制作体制を構築するために必要な駐車スペースがある(TVコンパウンド) 7.関係者駐車場 ◆ホームゲーム運営関係者用およびクラブ関係者用としてとして、適正規模で、関係者駐車場がある ◆会場設営および持込機材等の運搬用大型車両用として、適正規模で、専用駐車スペースがある
B.LEAGUEはどう変わる?
https://www.bleague.jp/new-bleague/
クラブ・アリーナを軸に地域が発展するための審査基準を設定
https://www.bleague.jp/new-bleague/examination/
↑、これらを見るにつけ、京都アリーナ(仮称)が、Bリーグ・プレミアの審査基準をクリアするアリーナとなることは、かなり困難と考えますが、みなさんはいかがでしょうか?
「アリーナ」建設には、地元住民の理解と期待、企業の大規模な投資、同線となる道路整備が不可欠であることは確かであるようです。
5月3日、あいみょん「ドルフィン・アパート」アディショナルショー当日の様子
百聞は一見にしかず。実際のジーライオンアリーナ神戸、正面から終演後の外観などをご紹介します。
※アリーナ内部の撮影は主催者により禁止されています。









<サイト内のまとめ>